北アルプス奥地にある三俣山荘

そこで行われている「道直し」という活動にボランティアで行かせていただきました。

ありがたいことに三俣山荘には友人や知人が多く、その人たちが繋いでくれたご縁もあっての今回の参加だったのでとても楽しみでした。

昨年もお邪魔した三俣山荘に今年も行けること。みんなに会えること。そして、道直しについて知れること。

そんな、ワクワクと学びの”道直し”記録です。

「道直し」とは

簡単に説明しようとすると少し難しく、文字の通り「道を直すこと」である。
では、なぜ道を直す必要があるのでしょうか?

普段、歩いている登山道でもしっかりと見ると分かります。

岩や石がむき出しになっている道や、
砂が流れてしまい植生たちが倒れている道、
何メートルにも横に広がった道。

最初から山に道があったわけではないと思います。
元々は草原で、緑が一面に広がって植生や動物たちが生活する場所。
時代は少しずつ変わり、いろいろな目的で人々が山を歩いたのでしょう。
その草原の上を人々が歩くことで草や花が折れ、道ができていき、雨が降り、雨水が道の上を流れ、土や石、岩が流され地面が削られていき、さらに流されていく。
これが人が歩いた時の衝撃とそれににより起こった道のえぐれです。

このまま何もせずにいると、道幅は広がり、植生は減ってき、今見ている景色は時間が経つにつれてどんどん変わっていってしまいます。

その変化を食い止め、再生させるための活動が「道直し」なのです。
道直しの活動をより知っていくための根本である自然と向き合う必要があるのではないでしょうか。

自然を知るための観察会

少しネガティブな出だしになってしまいましたが、
道直しのことを考えると、「じゃあ歩かないほうが良いんじゃない?」と思う方もいらっしゃると思います。
その考えは極論で、もう少し柔らかく考えてみると…
今ある自然を守りつつ、戻せる場所はを戻していけば良いのです。

あくまでも、これ以上自然を失わない。そして再生させることが大事だと私は思います。

今ある自然の現状を知るところから道直しは始まります。

三俣山荘までの道にハイマツをの中をくぐって歩く道があります
横に目をやると、ハイマツが生えている地面よりも50cmも下にある岩の上を私たちは歩いています。
これが先ほど説明した、衝撃によるえぐれです。
元々、道など無かったのかもしれないな…と感じます。

これは登山道の脇に広がる光景です
上から流れてきた雨の水が登山道に入り勢いよく土を流してしまった状況です。

左側は人々が道以外の場所を歩き、一面に生えていた植生が消えてしまった道です。
右側は、数年前にグリーンロープを張り歩ける範囲を制限したことで、グリーンロープの向こう側には植生が残っています。

山で見かけるグリーンロープも大切な役割があります。
中には踏み入れないようにしましょう。

こうした今ある道は、人が歩いただけで出来たわけではありません。
山を歩く際に使っているストック。
ストックの先にキャップはついていますか?
キャップが付いていない状態で地面に突き刺すとどんなことが起こるでしょう。

そこに植生があれば根まで傷がつきます。土が崩れることもあります。
こうした小さな衝撃が大きな損害へと繋がってしまうのです。

ストックを使う際はゴムのキャップを付けて、ストックを置く場所にも気を使ってあげましょう。

あと、もう一つ。

足の置き場、歩く場所です。
人とすれ違う時、どこで立ち止まりますか?
地面が崩れそうな場所、植生の上などを踏んでいませんか?

ちょっとした気遣いが今ある風景を何年、何十年後にどう守られてきたのか、風景として私たちに教えてくれるのではないでしょうか。

15年前に閉鎖した元登山道の地面。人が歩かなくなってからここまで植生が戻ってくるのにどれだけの月日が必要なのだろうか…

道直し実作業、土留め作り

自然観察会を経て、いよいよ実作業です。

土の流出を防ぐ土留め。これを設置することで土をためて植生の回復を促します。
私たちは登山道を守る土留め(流れてしまう土を受け止める)と、
山の斜面を守る土留め(水流による道の削れを止める)を作りました。

登山道を守る土留め・山の斜面を守る土留め

土留めの作り方は、源五郎ネットを敷き、石を詰め、砂や砂で隙間を埋めます。
場所や目的に応じて、丸太を道幅に合わせてカットし、はめ込み、鉄の棒で丸太と地面を固定したりしてから源五郎ネットを使ったりします。
(源五郎ネット:麻やヤシ繊維でできたネット)
大きな石や足を置きやすい石を平らに敷き詰め固定します。
しっかりと土をせき止めることも大事ですが、見た目も大事です。景観を乱さないためにも美しく作らなくてはいけません。

本来であれば、自然の中にあるもの(現地材)だけで土留めを作りたいがその段階ではないとのこと。
今は、流れていく土を流さない。削れていく道の側面を守り植生を守ることが最優先。
そのため丸太や鉄の棒、源五郎ネットを使っていますが、いつかは使わない土留めだったり、丸太やネットを外す日が来てくれると嬉しいな。でも、それを知れるのは何年も先の事。
今できることをコツコツとやっていくのです。

今回、昨年つくった土留めの上に植生が戻ってきた光景も見ることが出来ました。

常にトライ&エラーの日々で、学びながら変化を楽しみながら道直しという活動に取り組んでいる山荘スタッフの皆さんの姿を見て、羨ましく思いました。
私たちには計り知れない葛藤や不安もあると思いますが、好きな山のために、今ある風景のために、自分たちにできる最大限の事を全力で取り組んで、向き合っている姿がとても素敵でした。かっこよかった。

私にできること

道直しにボランティアで協力するというよりも、多くの事を経験させていただき、教えていただきました。

人が自然の中に踏み入ることで衝撃を与えてしまっているということ。
しかし、人は自然を戻すために行動を起こせるということ。
自分が気持ちよく山を歩けているのは誰かの支えがあり、自然の強さがあり、それらに私たちは守られているということ。
今回気づけた小さなことから少しずつ視野を広げて、考えて、行動に変えていきたい。
そして、今ある自然を守っていくために、このような素晴らしい経験を記録として残していくことが今の私にできること。

今回、私たちが直した道は直すべき登山道のほんの一部。ほんとうにちょっと。
終わりやゴールは見えないけど、続けていくことに意味があるのだと私は思います。

また来年も参加し、みんなで直した道を確認しに行きたい。

登山道や、植生、風景がどう変わっているのか、また見に行きたい。

たくさんの登山道を歩き、観察したい。

5年、10年、20年後、私たちが携わった登山道がどう変化していくのか、

また、それをどう伝えられるのか、

とても楽しみです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

モモコ

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